金融庁「定年後2000万円必要」発言を読み解く

令和元年6月3日、金融庁の金融審議会は市場ワーキング・グループ報告書で「高齢社会における資産形成・管理」を発表した。

今回テレビ・ネット等では騒がれているが、個人的にはなぜ炎上しているのか分からない。

今回炎上しているのは、レポートの中の1.現状分析の中の(2)収入・支出の状況と(3)金融資産の保有状況、に記載の文章である。

内容を詳しく見ると以下の通り

収入・支出の状況

平均的収入・支出

  1. バブル崩壊以降、賃金は長く伸び悩んできた。年齢別・時系列のいずれで見ても、各世代の収入は低下傾向にある。
    公的年金の水準については、今後調整されていくことが見込まれる。少子化等の影響で、今後もこの流れは続くであろう。
  2. 支出は収入と連動しており、大きく伸びていない。年齢別で見ると、60歳以上の支出は、現役世代と比べると2-3割減少する。
    支出は減少するが、収入も年金給付に移行するため、定年後世帯で見ると、月額5万円程度金融資産を取り崩す必要がある。

勤労状況

  1. 65歳から69歳の勤労状況を見ると、男性55%・女性34%が働いている。
  2. 60歳以上で働いているの半数以上が、70歳以降も働きたいと回答している。
    (「働きたい」ではなく、「働かないと生活できない」の間違いでは?)
  3. 転職・フリーランス等の働き方の多様化により、退職金が減るリスクがある。

退職金給付の状況

  1. 退職金と年金が、老後生活の基盤であった。しかし、退職金給付額は年々減少している。
  2. 退職金制度を導入している企業も、全体の80%と年々減少している。
  3. 大卒者の退職金給付額は1998年の3200万円をピークに、2017年は1997万年と6割近い下落となっている。
  4. 退職金を受け取った人のうち3割は、退職金の額を受け取るまで知らなかったと答えている。

金融資産の保有状況

  1. 65歳時点における平均の金融資産保有額は夫婦世帯・単身男性・単身女性でそれぞれ、2252万円・1552万円・1506万円となっている。
    (あくまでも平均であるが、夫婦世帯よりも、単身世帯の方が貯蓄額が少ないのは意外である。)
  2. 上記のように、毎月約5万円の赤字が発生すると仮定すると、20年で1300万円、30年で2000万円の貯蓄取り崩しが必要となる。
  3. 上記赤字には、老人ホームや介護、リフォーム等の資金は含まれていない。

 

その他にも、認知症患者の増加・金融サービスの在り方といった内容が記載されている。

 

感想

これらの内容を一部切り取って、政府のせいだという記事が散見される。

そもそも、このようなレポートが出る前から、年金だけで老後生活が送れると思っていた人などいるのだろうか。

普通の感覚として、年金だけでは老後の生活は送れない。老後のためにしっかりと貯蓄しておこうと考えている人がほとんどであると思う。

 

にもかかわらず、「自分で2000万円自分でためなければいけない?」「政府のせいだ!

」といった論調になっているのは、なぜなのか。

 

そもそも定年時点で金融資産が2000万円しかなかったら、老後生活はかなり厳しいだろう。

 

今回のことで、政府やGPIFへ怒りの矛先を向けるのではなく、老後へのマネープランをしっかりと自信で立てて、年金に頼らない資産管理を各々で行う必要がある。

(政府が政府だったら、そんなことすら教えてくれないと思う)

(年金の話になると、老齢年金の話にしかならないのもどうかと思う。)

 

そんな当たり前に事を、今回のレポートで教えてくれた。

ただそれだけの話である。